3665 エニグモ銘柄分析(新規購入)

個別銘柄分析

事業概要

BUYMAというファッションサイトを運営する会社です。ZOZOなどの他のファッションサイトとの違いは、海外在住の個人が日本では販売されていないようなアイテムを仕入れて、直接個人に販売するのがメインなことでしょう。今は、法人の出店も増えたようですが、出品のメインは個人となっています。

Speciality Marketplaceと定義しているように、ファッションだけではなく家具・キッチン・アウトドア・スポーツ用品も扱い始めているほか、オプショナルツアーも始めています。なんでもあるオンラインストアではなく、良いものが揃っているオンラインストアというブランドを確立しており、オンライン上のセレクトショップと言えると考えています。そのうち食品も取り扱うようになるかもしれません。

この店側で厳選されたアイテムを揃えるというのは、昨今の消費者のトレンドにもあっていると思っています。

業績

売上は右肩上がりが続いていますが、営業利益は2016年から2018年まで安定しませんでした。これは、会員獲得に広告宣伝費をかけたりと投資が続いたためです。特に2016年は赤字となるくらい大きな広告宣伝費をかけました。結果として会員獲得が進み2017年は売上が大幅に増えます。それ以降は、営業利益率は40%前後に保っているので、コストコントロールはうまい会社なのではないかと思います。

ショッピングサイトであり会員獲得コストは、売上の多寡に関係ありません。そのため、売上が増えてきた近年はやりたいマーケティングやM&Aをしながらも、40%前後の営業利益率を保つことができており、好循環となっているように思います。

主要KPIと競合との比較

扱っている商品の価格帯が異なるので、直接競合になりえるのかは疑問ですがファッションサイトNo1のZOZOと主要KPIを比べてみたいと思います。

とまあ、明白ですがエニグモは高級路線、ZOZOは大衆路線ということが明白です。ただ、1件あたり単価が3倍の差で、アクティブユーザーは7倍の差なのでエニグモの方が景気の動向に左右されやすいと言えるかもしれません。

エニグモ(2021年1月)ZOZO(2021年3月)
商品取扱高(百万円)62,899419,430
取扱件数(件数)2,864,91711,162,186
会員数(人)8,585,119
アクティブユーザー(人)1,313,9509,485,669
1件あたり単価(円)23,7237,991

なお、エニグモは、ライフスタイルカテゴリとして家具・キッチン・アウトドア・ゴルフ用品の取り扱いを始めており好調に伸ばしています。上期で10億円程度なので、通期でも20〜30億円程度でしょうが伸び率はすごいですし、全体630億円くらいの総取扱高なので、このまま伸びていけばそれなりに業績に貢献していきそうです。

さらに、エニグモの特徴として本気で海外市場を狙っている点にあります。もともと、当初から韓国に進出したりと海外進出に積極的だったのですが、2019年10月に北米市場にフォーカスして以降、ラクジュアリーに強いというブランディングがあたり急激に成長しています。残念ながら金額の表示がないのですが、QoQレベルで急激に伸びていることがわかります。
特筆すべきはその単価で1件あたり86,000円と日本の4倍近い高単価になっています。

市場規模と成長戦略

エニグモはファッションサイトという位置付けではなく、高価格でもブランドや高品質なアイテムを好むユーザーを持っているという特性を活かしてファッションだけではなくインテリアや旅行市場にも進出をしています。クロスセル戦略としてはとても有効だと思います。さらに、海外展開やデータ活用など、今後大きく花が開きそうな施策を打っています。

データドリブンなマーケティング

社員の70%がコードがかけるITエンジニアだという通り、データドリブンなマーケティングを行う会社になりつつあります。例として挙げられていたのが、以下のアイデアです。さらにこれらの施策をユーザー別、カテゴリ別に行うことでさらに精度を上げていく方針ということです。

  • 過去のライフタイムバリューを使うのではなく、顧客ごとに将来のライフタイムバリューを予測し、より将来ライフタイムバリューが高い顧客へのマーケティングを強化する。
  • チャーンレート管理も顧客毎に解約可能性を計算し、可能性が高いユーザーには別のマーケティングを行う。
  • ファッショントレンドをデータから予測し、今後どの商品がどれくらい売れるかを計算する。このデータをパーソナルショッパーに提供することで、パーソナルショッパーにとって魅力のあるマーケットプレイスになるほか、機会ロスも防ぐことができる。

データドリブンとは違いますが、英語が堪能な日本人パーソナルショッパーに海外セレクトショップと消費者との間に入ってもらうことで、海外セレクトショップを日本基準のサービスで提供し、かつ魅力的な品揃えを強化するなど、日本だとハードルになりがちな言語の壁も越えようとしています。

海外セレクトショップが日本で販売するためには、問い合わせなどで言語の壁がありましたがそれを解決できるとてもユニークなサービスだと思います。

海外

海外ではよりラグジュアリー商品専門のマーケットプレイスというポジションをとっていくようで、すでにヨーロッパなどでラグジュアリ商品を売るならBUYMAという評判になっているとのことです。

さらに、これまでは英語がOKな日本人出品者の商品を GLOBAL BUYMAでも売っているだけでした。それをGLOBAL BUYMAで売りたいという海外の出品者(アメリカ、イタリア、イギリスを中心に10カ国)が増えてきたことにより、商品の拡充とともに本当のグローバルなマーケットプレイスに向かっているということです。

クロスセル

現在もファッションのほかに、ライフスタイルカテゴリーに力を入れているほか、コロナ後を見据えて海外オプショナルツアーの予約も展開しています。今後のM&Aとして食品・アルコールECなども視野に入れているということなので、まさに高価格でもブランドや高品質なアイテムを好むユーザーに刺さるアイテムを全方向で拡充していく戦略で、事業規模の広がりが楽しみになります。

株価の水準

予想PERは22倍と成長株としては高くありません。過去のレンジを見ても30倍前後というのがノーマルなポジションだと思います。めちゃくちゃ割安になったというわけではないですが、この会社のPER水準としては下限に近づき、成長株としても投資しやすいPERになったと思っています。

ただ、バリューHRもそうですがこういうケースはすぐの上昇は期待できません。現時点では、市場から本当に成長株なのかという疑惑を向けられているから安くなっているのであり、今後の決算で本当に成長株であるという証明をしなければいけません。逆にいうと、その証明さえできればPER水準の訂正及び業績に伴う株価の上昇の二つが取れると考えています。

特にPER水準の訂正を狙うのであれば、今後の成長性を検討して未来に賭けた投資をする必要があると考えています。

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