3768 リスクモンスター2022年度第2四半期決算レビュー

個別銘柄分析

東京商工リサーチとの業務提携解消

決算補足資料が出てきたので、四半期決算記事を書こうとしていたらびっくり仰天な発表がありました。創業以来の業務提携関係であり、企業情報の提供元であった東京商工リサーチとの業務提携解消と企業情報提供のストップです。会社の発表を見る限りでは、東京商工リサーチ側から申し出があり受諾したということです。

当然気になるのは、同社のデータベースに与える影響と8.68%を保有する筆頭株主としての株式の行方です。

データベースに与える影響

リスモンの発表によると、以下の理由によりサービス面、RM格付けの精度に与える影響は軽微と判断しているそうです。

  • 2020年12月より独自データベースを活用したサービスを開始し、RM格付の精度も向上している
  • 10年以上にわたり独自データベースの収集、メンテナンスを行っている
  • 独自データサービスへの切り替えにより、データ利用、サービス開発の制約が無くなり、アライアンスやシステム連携も柔軟に、かつ、機動的に実行できる

一方で、リスクモンスターの情報使用料支払いに占める東京商工リサーチの割合は、以下の通りで創業当初の90%近い数値から、70%くらいに下がってはいるものの、未だ情報の大半を東京商工リサーチから買っていると言えます。これがゼロになって、どこか別の調査会社に代替えが効くのか、かなり不安なところです。

2011/3:89.5%/192百万円(214百万円/34.5%)
2012/3:87.7%/190百万円(217百万円/33.6%)
2013/3:88.9%/210百万円(236百万円/37.5%)
2014/3:86.2%/219百万円(254百万円/35.5%)
2015/3:87.6%/223百万円(254百万円/34%)
2016/3:86.1%/227百万円(264百万円/34%)
2017/3:80.5%/219百万円(272百万円/34.2%)
2018/3:75.7%/232百万円(306百万円/35.6%)
2019/3:75.8%/243百万円(320百万円/35.5%)
2020/3:76.2%/255百万円(335百万円/34.2%)
2021/3:73.7%/252百万円(342百万円/31.9%)
※括弧の中は情報使用料総額/売上原価に占める割合。

一方で2020年以降のプレスリリースを見ると、信用調査会社との業務提携や独自データベースを使ったサービスを次々に発表しており、東京商工リサーチのデータベースに頼らない体制を整えていることがわかります。さらに、それぞれのプレスリリースを読んでみると、いくつか気になる記述があります。

反社ヒートマップでは、「e-与信ナビ対象企業の商号・代表者等をリスモンが独自に収集したコンプライアンス関連情報から自動検索」という記述があります。さらに、リスモンAI与信管理PDFでは、「企業情報は、「AIリサーチ(AIを駆使したWebクローリング等)」と、数多の企業情報を取り扱うリスモンの「DX(デジタルトランスフォーメーション)ノウハウ」を用いて収集、生成」とあり、リスモン独自企業データベースAPI連携では、「リスモン独自企業データベース・・・国税庁が提供する法人番号情報を中心とした公知情報等から、リスモンが独自に収集した日本最大級となる約500万社の企業情報データベースです。」とあります。

これらのプレスリリースから想像するに、東京商工リサーチのデータベースが使えなくなることはある程度織り込み済みで、独自データベースの構築を進めていたのではないかと思われます。確かに、企業情報といっても大半は公的な開示や企業からの開示など公知な情報を如何に収集できるかということになり、これをAI等を使って集めることができる技術を磨いてきたということでしょう。

さらに、人をかけて調査をするニーズに対しては、テイタンと信用交換所との業務提携で保管する戦略でしょうか。

2020年以降のこれらの施策を見ていると、充分に準備が整った上での業務提携解消のような気もします。

リスモンの2021年3月期の情報使用料は3.4億になります。そのうち東京商工リサーチ分は2.5億円となり、売上原価15.4億円の16,4%を占めています。来期以降はこれがなくなるため、利益率の改善が見込まれます。結局、東京商工リサーチがいなくても情報に問題はないのかという点に絞られてくるわけで、顧客の反応(=解約)と合わせて注視する必要がありますが、これまでの施策を見てみるとそこまで悲観する必要もないのではと思っています。

筆頭株主としての株式の行方

東京商工リサーチは8.68%で325,500株を保有する筆頭株主です。1日の出来高が50,000株前後なので、市場で売却されたらとんでもないことになります。ただ、時価総額も低いので今の株価で2.6億円程度しかありません。買い取ってしまうというのも選択肢だと思いますが、この点については、単に東京商工リサーチの保有方針は不明とあるだけです。かなりの潜在的な売り圧力ではあるので、この点の不安が払拭されない限りは、株価は厳しいものになる気がします。

2022年3月期第2四半期業績

ということで、かなりのサプライズで今期の業績はどうでもよくなった感もありますが、見ていきたいと思います。

与信管理サービス

利益率の高く本命サービスであるASP・クラウドサービスが好調なので問題ありません。コンサルサービスが下がったのも、反社チェックサービスが前期はスポットでこちらのセグメントだったのが、5月より反社チェックヒートマップとしてASP・クラウドサービスの中で提供するようになったためであり、全く問題ありません。利益率の低下も、サービス増強のための先行投資及び人件費の増加ということで、東京商工リサーチとの業務提携解消を見越した動きなのかと思います。ここら辺は来期の業績見込みが山場になると思っています。

ビジネスポータル

ビジネスポータルは好調でした。理由としても顧客の在宅勤務の増加ということで、時流に乗っていることがわかります。ただ、会員数が減っているのが懸念点で、在宅勤務の増加による1顧客辺りの利用量増加は、継続して伸びるものではなく新規顧客の獲得が必要になります。

教育関連

前期比で見ると、前期のコロナによる一時利用の影響から見た目は悪いのですが、会員数の増加はかなりポジティブな要因です。特に、定額制社員研修サービスの利用者数の増加ということであり、所謂サブスク収入として継続的な収入が見込まれます。数値としても、前年の第一四半期が良すぎただけであり、第二四半期で見ると前年同期比で売上19%、利益50%増と大幅な増収増益です。

BPOサービス、中国事業

3割くらいが中国事業からの売上になります。BPOは前期が良すぎたのもあるのですが、利益率もパッとしません。ただ、売上としては無視できない数値であり、ここを安定できるような戦略を考えてほしいものです。中国事業は、第一四半期で人件費強化で大幅赤字になりましたが、第二四半期は黒字を達成しています。中国事業はニーズは大きいと思うので、伸ばしていってほしいと思っています。

2022年3月期業績予想

通期に対する進捗率は55%程度あり、この業績見込みを達成するのは問題ないと思います。

今期はBPOサービスで新規買収が1件ありました。同じBPO事業をやっている他の会社によると、紙のデータを電子化するBPOサービスのニーズは、少なくとも今後数年間は途切れないという見込みを聞きました。それを考えると、BPOは稼げる時に稼いでほしいものです。

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