3854 アイル2021年7月期本決算レビュー

個別銘柄分析

2021年7月期業績

終わってみればWindowsの切り替え特需があった昨年度を上回る好業績でした。当初の予想からは、打ち上げは7%程度の上振れですが、利益は50%近い上振れを達成しています。

部門別の業績を見ると、一見してCROSS事業がいいように思えますが、基幹となるシステムソリューション事業の2020年7月期はWindowsの切り替え特需が含まれています。そのため、この特需分を除くと売上19%、利益24%とCROSS事業を上回る伸びでした。システムソリューション事業は基幹であり、ここからCROSS事業につなげたりとクロスセルが見込めるので素晴らしい状態だと思います。

全体をみてもストック収益も、売上15%、利益18%の伸びで利益に占める全体の構成比が2022年度は51%に達する見込みです。利益率の高いストック収益が増えることで営業利益率も向上しており、13.4%から13.9%に上がりました。

さらに、増配も行っておりこれまでの予想から2円増配の17円となりました。来期も同じ17円としていますが利益が上振れした場合は、増配があると思っています。

2021年第4四半期単独の業績

四半期の中で波があるため、四半期ごとに見るときれいな右肩上がりというわけにはいきませんが、それでも好調でした。下の図のエクセルは、事業ごとの四半期の売上利益をまとめたものですが、上二つのシステムソリューション事業とWebソリューション事業のCROS事業は、四半期単独の数値でほぼ常に前年同期比を上回っています。さらにCROSS事業については、前四半期を上回るという成長性です。

同社の過去の数値に比べて成長率が小さくなっているという意見もありますが、ある程度の規模に成長していくなかで引き続き右肩上がりの成長を保ってくれているのであれば、保有し続けたいと思っています。

2022年7月期業績予想

ULSグループ同様に「収益認識に関する会計基準」の影響で対前期の数値がありませんが、敢えて計算すると売上は横ばい、営業利益は9.3%増となります。売上横ばいで利益が増なので、営業利益率が13.9%から15%に上昇する計画となっています。原価低減などはないはずなので、原因としては全体利益に対するストック利益の割合が46.2%から51%に増加するためでしょうか。これが計画通りとなると、売上と同時に収益性を高めていけるということで、かなり嬉しい状況です。

また、2021年度もそうでしたが、近年は保守的な通期見込みをしています。2019年、2020年、2021年と3年連続で上方修正を行っており、営業利益の期初の通期見通しに対する進捗率はそれぞれ134%、142%、152%です。営業関係のデータも開示ベースですが、以下の通りであり引き続き強い引き合いが続くのであれば、売上が横ばいということはないのではと思っています。

ただ、収益認識に関する会計基準の適用により、2022年度は数値が落ちているようでそれを見込んだ数値なのかもしれません。この会計基準の変更は、2022年度に検収を迎えるプロジェクトからの売上が前期に取り込まれるマイナスの影響と、2023年度以降の検収を迎えるプロジェクトの売上の一部を先に取り込めるプラスの影響があり、一概にマイナスとは言えません。アイルは、数値的な影響は公表していないのでここら辺は不明となります。

中期経営計画

今回、2024年まで3か年の中期経営計画も発表しています。今の成長を続けていくという数値であり、敢えて違うとすれば営業利益率を上昇させていく計画となっている点でしょうか。3年で3.6%も利益率を改善させるということで、開発スタッフの人件費が主な原価となる同社ではクラウド型にどんどん移行していかないと達成できません。ここは注意が必要だと思います。

ただ、事業環境的には中小企業のDXというまだまだこれからな領域を専門にしており、コロナによってIT化の重要性・必要性に経営者が気が付いたことにより今後さらにこの動きは加速していくと思っています。そういう意味で、まだまだこれから楽しみだと思っています。

なお、EPSは2021年度の48.89円から72.26円になります。30倍から50倍のPERとすると、2,168円~3,613円が目安の株価となります。

純資産配当率(DOE)8%以上を目標

株主還元方針として、今回初めて純資産配当率(DOE)8%という数値目標が出てきました。従来は配当性向30%以上のみだったので、かなり大きな変化です。

DOEは年間配当総額÷株主資本×100%で計算され、株主資本は資本金+資本準備金+利益剰余金で求めることができます。さらに、資本金と資本準備金は通常は変動しないので、株主資本の変動要因は利益剰余金ということになり、当期純利益−支払配当額がその増減要因となります。そのため、当期純利益がプラスで配当性向が100%未満であれば、株主資本は増加し配当金も増えることになります。

一方で、配当性向は年間配当総額÷当期純利益×100%であるため、当期純利益の多寡により配当額は変わってきます。

アイルのDOEの実績は、2019年度7.6%、2020年度11.4%、2021年度10.3%なので、DOE8%はそこまで高い数値ではありません。ただ、DOEが指標になるということは、当期純利益が前年度より低くなったとしても大幅な配当減額とはなりません。毎年の配当がDOE8%ギリギリであれば、当期純利益がプラスである限り、必ず増配をするということでもあります。配当が安定するということでいい傾向だと思っています。

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