9639 三協フロンテア銘柄分析(新規購入)

個別銘柄分析

月次報告でも書きましたがブロードリーフと西尾レントオールの売却資金で三協フロンテアを購入しました。三協フロンテアを購入するにあたって検討した内容です。なお、画像は全てバフェットコードさんの著作権となります。

売上と利益の伸び

9639 三協フロンテア
9663ナガワ

事業内容で注目した企業の詳細分析をするときは、まず最初にこのグラフから次の点に注目します。

  • 売上が右肩上がりで伸びているか
  • 営業利益は売上に比例して伸びているか
  • 売上と営業利益の伸びはどちらが大きいか
  • ROEは伸びているか

売上が右肩上がりで伸びているかという点はシンプルです。やはり企業の利益の源泉は売上です。物やサービスが売れないことには利益は作りようがありません。不採算事業からの撤退による売上の減少やM&Aによる売上の増大などの特殊事情には気を付ける必要がありますが、右肩上がりで伸びている企業が好ましいです。

営業利益と売上の伸びの比較=限界利益への注目

普通の事業会社であれば、売上から原価と一般管理費を除いたものが営業利益になります。そして、原価と一般管理費は大きく固定費変動費に分けることができます。

  • 固定費:売上の増減で変動しないコスト(人件費、家賃、広告宣伝費など)
  • 変動費:売上に連動して変動するコスト(材料費、運搬費、外注費など)

ここでは、特に固定費に注目します。固定費から読み取れるのは次の点です。

  • 業種ごとに固定費の比率は変わるので同業他社で比較するのがいい。同業他社より営業利益率が高く固定費率が高い企業がいい。
  • 固定費の比率が大きければ大きく、固定費の伸びが抑えられる業種であれば、売上の伸び率以上に営業利益が伸びる。
  • 固定費の比率が大きいのに、営業利益率が下がってきている企業は、売上の伸び以上に人件費や広告宣伝費などが増えているので注意。一時的な投資フェーズであればOK。

固定費率は有価証券報告書の注記などから原価や一般管理費の内訳を読み取り、その中から人件費や減価償却費を抜き出さなければいけないので少し難しいのですが、比較してみると同業種でも違いがあることがわかります。そして固定費について、簡易的に調べるのであれば、単純に営業利益の伸び率が売上の伸び率を上回っている場合、固定費の伸びを抑えられており、今後も売上が伸びれば営業利益率はさらに改善していくと考えられます。

三協フロンテアは、同業のナガワと比べてみると営業利益率は高く(15.8% VS 12.5%)、固定費率も高い(58% VS 53%)というのがわかります。

ROEが伸びているか

ROEは、ROE=当期利益÷自己資本という計算式で求められます。

そして自己資本は、増資などがなければ前期自己資本+当期利益で求められます。つまり、当期利益で自己資本が増えた分以上に翌期は利益を稼がないと、ROEは下がってしまいます。そのため、ROEが改善し続けているというのは、利益率が上昇しているということになります。

ちなみに、有名なROEデュポン分析では、ROE=純利益率(純利益/売上)×資産回転率(売上/総資産)×財務レバレッジ(総資産/自己資本)となっています。ですので、財務レバレッジを上げてROEが改善すると言われることもありますが、財務レバレッジを上げるために借入を行った場合、売上を伸ばさないと資産回転率がさがるので、ROEは変わりません。結局、借入を行い、それを元手に売上を計上し純利益を上げないと、ROEは改善しないことがわかります。

ちなみに、借入金を使って既存事業と同様の資産回転率で売上を計上し、同様の純利益率だった場合は財務レバレッジ以外は同じ値で財務レバレッジのみ改善するため、ROEは上がります。これが、新規ビジネスをするときに借金をして行うことでROEが改善するという理屈になります。

さて、これも三協フロンテアとナガワを見てみると、5年前の2015年3月期に比べて三協フロンテアは9.8%から13%、ナガワは7.1%から4.7%と、ここでも三協フロンテアが勝っています。

売上の伸びの原因を考える

売上を伸ばすためには、同業他社からシェアを奪うマーケット自体が伸びている新たなマーケットを開拓するの3つがあります。このうち、マーケット自体が伸びている場合は、マーケット全体のことも考えなくてはなりません。

まず、三協フロンテアとナガワを比べてみるとナガワも伸び率は小さいながら右肩上がりであることがわかります。このため、ある程度はマーケット自体が伸びていることが原因としてありそうです。

ですが、三協フロンテアの伸び率はナガワの倍以上あります。この理由を調べるために、三協フロンテアのセグメント情報を見てみます。そうすると、本設販売(店舗、事務所)というセグメントが伸びていることがわかります。手元のデータが2017年から2020年までだったので、4年のCAGRですが各セグメントごとの売上高の伸び率は以下の通りとなります。

4年CAGR2017年売上比率2020年売上比率
仮設レンタル
(ゼネコン・プラント)
5.8%44%43%
仮設販売8.1%24%25%
本設レンタル
(イベント・その他)
18.7%4%6%
本設販売
(店舗、事務所)
20.1%14%20%
その他▲13.9%13%7%
全体7.1%100%100%

私の認識もですが、三協フロンテアと言えば建設現場の仮設ハウスだと思います。そしてその認識はある意味あっていて、売上比率43%と半分近くを占めます。このセグメントは5.8%の伸びということで、おそらくマーケットが伸びているのでしょう。ただ、会社全体の伸び率7.1%には届きません。

これを補っているのが本設販売と本設レンタルになります。特に本設販売は、売上伸び率20%で売上比率を14%から20%に引き上げています。この本設販売というのは、三協フロンテアのHPによるとデザイン性も良く、工場での製作、現場では組み立てるだけなので工期も短いという特徴で、事務所や店舗などの利用が増えているということです。おそらく従来であれば、ハウスメーカーや工務店が作っていた建物を三協フロンテアの製品が使われるようになったのでしょう。ここが正に新たなマーケットを開拓するにあたると思います。

残念ながらセグメントごとの利益の開示がないため、利益率がわかりません。ただ、営業利益率が伸びていることから、仮設レンタルよりは利益率はいいのではないかと思っています。教えてくれるかはわかりませんが広報に質問してもいいですね。

この本設販売はコロナ化で増々問い合わせが増えている上、密の回避から施工面積が大きくなる傾向があるらしく今後も恩恵を受けるのではないかと考えています。

株価の水準を確認する

さて、ここまで主に業績についてみてきましたが、株価の水準についても見ていきたいと思います。どんなにいい会社でも高すぎる場合は買えません。株価の水準が高いのか低いのかを判断する材料として、PERの推移を確認します。

PERはあまりにも有名な指標ですが、PER=株価/一株当たり利益で計算することができます。つまり、今の株価は何年分の利益に相当するかというのがわかる指標です。一般的に20以下がいいと言われますが、正直業種によって異なります。成長が期待されている業種は、今後も一株当たり利益が伸びていくことが見込まれているためPERも高くなります。逆に、一株当たり利益が増大することが見込めない場合は、PERは低くなります。

そのため、一番いいのは同業他社と比較することになります。さて、同業というとナガワと東海リースなのですが、この2社のPER高いんですよね。ナガワは20倍~40倍で今は49倍、東海リースは20倍弱で今は27倍。一方の三協フロンテアは、10倍前後で今は9倍です。

この違いはちょっとよくわかりません。ナガワと東海リースはコロナ後にPERの水準があがっているので、コロナ需要が織り込まれたのかなと思いますが、三協フロンテアはこれすら織り込まれた様子がありません。

また、三協フロンテアのPER推移も確認します。昔より株価があがっても、その分一株当たり利益が増大していればPERは変わらない水準になっているはずです。また、一株当たり利益の伸びが株価より大きければ、株価は上がってもPERは下がっているはずです。

上のグラフを見てみると、コロナ前の一番安い水準まで落ちてきています。

結論

  • 事業内容:業績は安定して伸びており、新しいマーケットの開拓も順調
  • 利益の質:営業利益率、ROEも徐々に伸びてきており、利益の中身も良いことがわかる
  • 株価の水準:同業他社と比べても、同社の過去水準と比べても割安
  • 配当利回りと配当性向:配当利回りは3.2%と高いが、配当性向は28.6%と低い

懸念材料としては、仮設レンタルは建設業界の動向に依存し、本設販売はフロー収入とストック収入がなく常に受注を上げていく必要がある点です。ただ、大手ゼネコンの売上推移をみると、仮設レンタルはそこまで建設業界の動向に比例はしていません。

本設販売は、同社の第2四半期の事業報告書に、

3密対策やテレワークの導入など、新たな空間を必要とする、または、既存の空間を拡張するといった需要の高まりを受け、展示場の来場者やホームページの問い合わせが大きく増加するなど、事業は比較的堅調に推移いたしました。

とあり、コロナによる社会の変化を追い風にできていることがわかります。受注が必要とは言え、仮設レンタルと販売は建設現場がある限り必ず必要になり、単価もほぼ決まっているため相見積もりにもなりません。建設会社に入り込んでしまえば、ある意味ストック収入となります。本設販売についても、1件1件の事務所などは規模もそこまで大きくなく特定の会社や業種に依存するものでもないので、社会的なニーズが存在する限り安定的に受注はできるのではないかと思います。

また、この業界は災害時には需要が急増する業界でもあります。

これらの点から、投資に値する。むしろ積極的に買っていきたいと考えています。

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