アーリーリタイア後の法人化による社会保険料の効率化

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さて、前の記事ではアーリーリタイア後の住民税、国民年金、国民健康保険料の最適化の計算をしたのですが、今回はさらに進んで法人を利用して厚生年金と協会けんぽを利用する場合の最適化を考えてみます。

法人化するとは?

アーリーリタイアのための法人化とは具体的には、法人に資産を持たせて株式の配当などは法人が受取り、個人は法人から給与をもらう形になります。このメリットは大きく3つあります。

  • 給与額を変更することで個人の所得をコントロールできる。
  • 家賃などの経費算入や給与に対する給与所得控除などを利用できる。
  • 収入が多い場合は、厚生年金や協会けんぽにすることで国民年金や国民健康保険より安くなる。

厚生年金の保険料

厚生年金の保険料は、給与を元にした標準報酬月額毎に定められています。本当は、32等級まであるのですが、ここでは関係ありそうな下の方を見てみます。

ここでわかるのが、少なくとも月額93,000円までは標準報酬月額88,000円とみなされ、保険金額は16,104円(193,248円)となります。ここでは法人も自分なので、全額を見ていきます。

なお配偶者が第3号被保険者に該当する場合は、配偶者は保険料を納めずに国民年金が満額支給されます。第3号被保険者の要件は、年収130万円以下で扶養者の収入の半分以下であることが求められます。

協会けんぽの保険料

法人の従業員の健康保険については、各団体の健康保険組合かそういう団体を持っていない会社のための協会けんぽがあります。そして協会けんぽの保険料も月給を元にした標準報酬月額で定められています。

協会けんぽは、最低の標準報酬月額が58,000円であり、月額63,000円までは7,076円(年84,912円)の保険料となります。ちなみに、厚生年金の最低水準である月額93,000円の場合は、10,736円(128,832円)の保険料となります。

協会けんぽの被扶養者の要件は、厚生年金と同様で年収130万円以下で扶養者の収入の半分以下であれば保険料を払わずに被保険者となれます。

家族4人世帯の合計金額計算例

合計収入合計所得住民税厚生年金協会けんぽ合計
113万月63千円
(75.6万)
月32千円
(37.8万)
3万非課税193,248円84,912円278,160円
167万月93千円
(111.6万)
月46千円
(55.8万)
57万非課税193,248円128,832円322,080円

これだけを見ると、この水準であれば無理に法人化せずに国民年金免除と国民健康保険5割免除を受けた方がいいように思います。ただ、もし不動産所得や分けて考えられる事業所得がある場合は、もう少し効率化できます。

厚生年金+協会けんぽVS国民年金+国民健康保険

給与所得と不動産所得/事業所得をミックスして考える際のポイントは、以下の通りです。

  • 厚生年金と協会けんぽを最低コストとするため、給与収入は年75.6万円。その際、主たる生計者に給与収入以外の収入があれば、扶養者の収入の半分以下という基準をクリアし配偶者の給与を給与所得控除55万円まで上げることができる。
  • 住民税非課税の水準である主たる生計者が171万円以下、配偶者が48万円以下になること

以上の条件で考えてみると、

  • 夫:給与所得20.6万円(収入75.6万円)、不動産所得/事業所得150.4万円=合計所得171万円
  • 妻:給与所得48万円(収入103万円)=合計所得48万円

が税金、社会保険料の支払いが最も少ない水準となり、この時の厚生年金・協会けんぽの合計は世帯で年278,160円です。

一方、法人化しない国民年金、国民健康保険で考えてみると、この水準だと夫の所得が162万円を超えるため国民年金全額免除になりません。仮に162万円で抑えるとしても、前回の試算では国民健康保険だけで350,546円かかります。法人化した方が安い上、年金も一番低い水準ながら老齢基礎年金分は満額で少額ながら厚生年金部分のプラスアルファももらえます。

合計収入合計所得住民税厚生年金
(国民年金)
協会けんぽ
(国民健康保険)
合計
給与:75.6万
不動産/事業:141.4万
162万非課税193,248円
(全額免除)
84,912円
(350,546円)
278,160円
(350,546円)
給与:103万48万非課税0円
(全額免除)
0円
(全額免除)
0円
(0円)
※年金の受取が、厚生年金の場合は全額、国民年金の場合は半額

このモデルであれば、320万円の世帯額面収入に対して世帯手取額は292万円となります。

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